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最終回 ミレニアルズが目指す先は「少し前までのニッポン」か!?

最終回 ミレニアルズが目指す先は「少し前までのニッポン」か!?

ニューヨーク取材で確信した二つの仮説

今回のニューヨーク取材で、「アメリカの若者の動きを注視することが、次なるアジア戦略、日本国内の戦略を生むことに結びつく」という自分の仮説に確信を抱きました。

アメリカの若者たちの「いま」の中に、日本の若者の「明日」が潜んでいるのです。当然、そこにビジネス・チャンスもあります。

アメリカの若者たちは変化への対応力が強いので、新しい仕組みや流行があっという間に広まります。カーシェアリングしかり、「スポティファイ」(音楽ストリーミング配信サービス)しかり、ティンダーしかりです。

日本の若者の流行は、戦後一貫してアメリカの流行を後追いしてきました。その構図はいまも変わらないし、ソーシャルメディアの普及によって、若者たちに対するアメリカの影響力はますます強まっているのです。だからこそ、私たちはこれまで以上にアメリカの若者に注目する必要があります。

もっとも、アメリカが若者トレンドを牽引する時代が、いつまでつづくかはわかりません。いまやアメリカはヒスパニック系の人口が3分の1程度になっているわけで、今後ヒスパニックがどんどん増えれば、アメリカという国が内側から変わっていかざるを得ません。アメリカが「ヒスパニックが最大勢力の国」になっても、いまのように世界のトレンドリーダーでありつづけることができるかどうか、まったく未知数なのです。

今回の取材で僕が得たもう一つの「結論」は、「アメリカのミレニアルズが目指している先にあるのは、じつは日本のような社会なのではないか」ということです。正確に言えば、いまの日本ではなく、「少し前までの日本社会」です。

アメリカは、格差社会化が極限まで進んだ国です。なにしろ、2012年までの3年間で増えた所得の95%は上位1%の富裕層が手に入れた(「朝日新聞」、2014年8月21日付)という、恐るべき「富の偏在」の国なのですから・・・。そのような行き過ぎた格差社会化に抗議して、2011年から「ウォール街を占拠せよ」とデモも起きたわけですが、ミレニアルズの政治意識の高まりも、そのことを背景としています。

つまり、ミレニアルズが政治に参加して実現しようとしているのは、格差の少ない社会であるわけで、それはまさに「少し前までの日本社会」なのです。

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ジェフリー・ウィンスタインさん(右)と同棲中の彼女。同世代で流行っていることを訊くと、特にラーメンが人気と答えてくれた

かつて、「一億総中流化」という言葉が、日本社会を象徴するキーワードになりました。それはけっしてホメ言葉ではなく、むしろ自嘲的なニュアンスの言葉だったのですが、いまにして思えば、「一億総中流化」していたころの日本は、まれに見る平等社会であったわけです。ところが、日本は90年代以降、アメリカの真似をして格差社会化を推し進め、その美点を自ら失ってしまったのです。なんとも皮肉な話ではありますが・・・。

とはいえ、日本はまだアメリカや中国などに比べれば格差の少ない社会ではあるわけで、いまでもアメリカのお手本にはなり得ると思います。

格差の少なさだけではありません。日本食に象徴される健康志向や、日本人の優しさ、人種差別の少なさ(残念なことに、最近は日本でもヘイトスピーチが問題化していますが)、素晴らしい「おもてなし」の心なども、いまのミレニアルズが目指している先にあるものだと思います。

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新刊本紹介

「少子さとり化」ニッポンの新戦略

「少子さとり化」ニッポンの新戦略 原田曜平著

発売日:2016年3月5日
本体価格:1300円(税別)

総合月刊誌『潮』で好評を博した「原田曜平のアジア”若者”見聞録」と潮WEBで連載された「ニューヨークから『アジアの若者たち』を考えた」が単行本として出版。 「少子さとり化」という現実に直面するニッポンの活路を、誰よりも世界の若者を知る原田曜平氏が指し示します。 キーワードは”「若者の国」アジア”――そこにニッポンの新たなチャンスがある!!

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