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第3回 「将来への危機感」が高いアメリカの若者たち

第3回 「将来への危機感」が高いアメリカの若者たち

変わりやすいアメリカ、変わりにくい日本

 今回のニューヨーク取材で改めて感じたこととして、「アメリカの若者は、いいものならすぐに取り入れる」ということです。変化に対する対応力が高いとでも言いましょうか。
 
 そのことをたんてきに示すのが、前回、取り上げた出会い系アプリ「ティンダー」があっという間に普及し、都市部における男女の出会い方を変えてしまったということです。今回、取材した人それぞれのスマホを見せてもらいましたが、すべての人がスマホおよびソーシャルメディアをちゃんと使いこなしていました。
 
 一方、日本の若者は、「立ち止まる時間が長い」というか、新しいソーシャルメディアやアプリが一気に普及するのではなく、ゆっくりと普及していくという特性があります。だからこそティンダーもなかなか普及しないし、アメリカ発の流行が普及するのもアジアでいちばん遅い場合が多いのではないでしょうか。
 
 第1回で取り挙げたレディ・ガガの例などはその典型で、ガガの人気が爆発したのは日本がいちばん遅かったと思います。
 
 過去の歴史を見ればわかるとおり、日本は、外国から輸入したものを独自にアレンジして取り込むことが非常にうまい国です。漢字を輸入すれば「漢字仮名交じり文」に創り変え、仏教をじゅようすれば独自の日本仏教に創り変え、というふうに・・・。したがって、けっして「変われない国」ではないのですが、外国のものを受け入れて「変わる」までには長い時間をかける国なのです。そうしたありようを、僕は「立ち止まる時間が長い」と表現したわけです。
 
 そのような国民性に加え、現在の日本はきょくたんな少子高齢化の国であるため、「若者がないがしろにされがち」であるという事情もあります。つまり、「若者の割合が少ないため、若者対策をしなくて問題になりづらい」のです。たとえば「若者の車離れ」という現象についても、自動車メーカーは、若者に車が売れず「困ったなあ」と言いつつ、それほど真剣に若者対策をしているとは思えないというのが現状ではないでしょうか。それは、中高年層が車を買ってくれれば、まだまだ市場規模が維持できるからです。
 
 そのような事情も、外国の若者文化が普及するまでに時間がかかることの背景要因になっているように思います。
 
 また、アジア各国に比べて日本人の英語力が低いことも、アメリカ発の流行の普及が遅い一因になっているでしょう。つまり、英語から日本語に“翻訳”されるまでのタイムラグの分だけ、シンガポールやマレーシアなどのように英語の得意な国より、普及が遅れるわけです。
 
 さらに根本的な要因として、日本がほぼ単一民族の島国であるということが、「すぐには変われない」特性を生んだのかもしれません。
 
 たとえば、台湾はベジタリアンが非常に多く、韓国はクリスチャンが非常に多い国ですが、それはいずれも戦後に起きた変化です。一方、日本のクリスチャンの数は、江戸時代からあまり変わっていないという説もあるくらい、それほど増えていません。それもまた、日本が「ドラスティックな変化が起きにくい国」であることを示す一例でしょう。
 
 また、日本は100年以上つづいている「老舗企業」が、世界でいちばん多い国でもあります。そのことも、「変化の少ない国」であることの例証でしょう。つまり日本は、一つの企業を作ったら、その企業をつぶさない、存続させるということに、非常に大きな力を注ぐ国なのです。
 
 だからこそ、大企業が倒産の危機に陥ったとき、国の税金を注ぎ込んでも倒産を防いだりするわけです。それは悪くいえば「保守的」、よくいえば「伝統を重んじる」姿勢ということになりますが、よし悪しはともあれ、そのような特性をもっている。

「変化を好まず、現状維持に力を注ぐ」――日本という国全体にそのような姿勢があるため、日本の若者は、アジア各国の若者やアメリカの若者に比べれば、やはり手厚く「守られている」面があります。近年、「ブラック企業」の問題などがクローズアップされ、「いまの若者は虐げられている」と言われがちですが、それでもなお、外国に比べれば日本の若者は恵まれているのです。

 日本は最近、若者の就職状況も改善されてきましたし、いまだに新卒一括採用という制度は維持されています。日本だけを見ていると「恵まれている」とは思えないかもしれませんが、世界の先進国と比べると、日本の若者の労働状況は大変に恵まれています。
 第1回で、先進国の若者全体が「さとり世代」化し、似てきていると書きましたが、その中で日本の若者の特徴を一つ挙げるとすれば、「危機感のなさ」だと思います。「失われた20年」をたいまでさえ、日本の若者はアジアでいちばん「自分の将来に対する危機感」がはくなのです。

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