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第2回 人生の苦難が人を鍛える

第2回 人生の苦難が人を鍛える

外務省での理不尽な新兵いびり

佐藤 外務省の理不尽さは、創価学会の温かい世界とは対極的でした。外交官試験に受かって外務省に入ると、連日深夜まで仕事が続きます。深夜2時になってから「はいキミ、この100枚1セットのコピーを60取っておいて」なんて言われるんですよ。「その資料は極秘だから、全部ハンコを押してちよう簿につけておいて」と言う。
 コピー機のソーター(※1部ずつセットでコピーする機能)なんてアテになりませんし、すべてのページがそろっているか一つひとつ確かめなければなりません。
土屋 夜中の2時にそんな大仕事を頼まれたら、徹夜しなければ終わりませんよね。
佐藤 そう。ページが順番に揃っていなかったり、1ページだけ抜けた資料を外務大臣に渡したら国会答弁がストップしてしまいます。それだけで幹部のクビが飛びますから、こういう書類を作る仕事は責任重大なのです。
「朝一番まででいいから」と言って上司がいなくなり、朝6時まで徹夜して必死で資料を作る。ところが朝になると上司は「悪い悪い。あれは使わないことになったから。それでキミ、この資料は全部シュレッダーにかけておいてね」なんて言うわけです。
土屋 ひえ〜。ひどい話ですね・・・。
佐藤 頭にきてシュレッダーを蹴っ飛ばしながら作業していたら、先輩から「そんなに腹を立てるな」と言われました。「こんな仕事に何の意味もないじゃないですか」「意味はあるよ」「何ですか」「根性がつく」。こういうことがしょっちゅう続くわけです。
 新人への嫌がらせを、先輩がわざとやるわけですか。

佐藤優

佐藤優氏

佐藤 旧日本陸軍の内務班と一緒で、外務省の新兵いびりは組織の伝統文化なのです。外務省以外の役所でもどうやら同じらしく、元財務省官僚の山口真由さんが最近『いいエリート、わるいエリート』という本を出版しました。この本に財務省の新兵いびりについていや〜な話が書かれていますから、興味があるようでしたら読んでみてください。
土屋 外務省や財務省にはせっかく日本で一番優秀な人が集まっているのに、若手をいじめて無駄なことをやっていたらもったいないですよね。
佐藤 僕がモスクワに勤務したころは、汚れ仕事なんていくらでもありました。ソ連の税関から呼び出され、こう言われたことがあります。
「日本のテレビ局の記者にとんでもないヤツがいて、トランクの中にプラスチック爆弾みたいなものが入っている。リード線のようなものが乾電池とつながっているんだ。トランクを開けろと言ったが、そいつはがんきように抵抗して開けようとしない」
 そのアヤシイ荷物は何だったんですか。
佐藤 大人のオモチャ。税関では「こいつはテロリストかもしれない」と騒ぎになったんだけど、荷物を開けてみたらロシアの女性と遊ぶためのオモチャだった。こんなことがあると外交官が呼び出しをらって、「あんたの国の人間は何をやってるんだ」と叱られるわけです。こういう理不尽でイヤ〜な仕事が、外務省にはたくさんありました。

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