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第2回 「アジアの一歩先」を進んでいくアメリカ

第2回 「アジアの一歩先」を進んでいくアメリカ

「真面目な出会い系アプリ」が日本で流行する日はくるのか?

 ニューヨーク取材で強い印象を受けたもう一つのポイントは、アメリカにおいても若者たちは、日本人と比較してSNS(ソーシャル・ネットワーキング・メディア)を通じてたくさんの恋愛のチャンスを広げているということです。
 日本の場合、「ソーシャル・メディアの普及によって逆に恋愛しにくくなった」という側面があります。どういうことかというと、ツイッターやフェイスブック、LINEなどというソーシャル・メディアを通じてたくさんの友達と常時「つながっている」ため、友人の目が気になって恋愛しにくい、という面があるのです。
「いま誰が誰とつきあっている」とか、「誰のいまの彼女は、前は◯◯とつきあっていた」とか、大きな「友人の輪」の中での恋愛事情が、全部筒抜けに共有されてしまうところが、ソーシャル・メディアにはあるのです。
「世間の目」を気にする日本人独特の感性のためか、日本の若者はそういう「筒抜け」状態を嫌がります。「周囲の友人に知れ渡るなんて面倒くさいなぁ。それならつきあわなくてもいいか」と、ソーシャル・メディアの「輪」のせいで恋愛するハードルが上がってしまったわけです。つまり、ソーシャル・メディアの普及が、日本の若者たちの恋愛離れを加速させている側面があるのです。
 ところが、今回ニューヨークの若者たちを取材してみて、その点は日本と大きく違うことがわかりました。アメリカの若者たちは、ソーシャル・メディアを介して恋愛相手を探すことに、まったく抵抗がないようなのです。むしろ逆に、「この人とはフェイスブックを通じた共通の友人も多いから、つきあっても安心だわ」というふうに、ソーシャメ・ディアによるつながりを一種の人物保証として捉えているのです。
 今回の取材で驚いたのは、「ティンダー(Tinder)」という一種の「出会い系アプリ」が、男女問わず若者たちの間に広く普及していたことです。

tinder

現在、アメリカやヨーロッパを中心に流行しているティンダー

「ティンダー」は、自分の半径数キロ以内で「ティンダー」に登録している異性の顔写真が表示されるスマホ向けアプリです。
 表示された異性が自分の好みである場合にはボタンを押してその旨を相手に知らせ、相手も自分が好みであった場合には「マッチング成功」となり、メッセージを交わすことができるようになります。
 僕が今回取材したニューヨーカーの中にも、ティンダーを利用している人が多く、周囲にも「ティンダーで出会ってつきあい始めた」というカップルが少なくないとのことでした。
 これは、日本の若者にはあまりない感覚でしょう。日本では、「出会い系サイト」というと、「性犯罪のおんしよう」とか、「おじさんが若い女の子をあさるための危ないサイト」という好ましからぬイメージがあります。恋人同士が「彼とは出会い系サイトで知り合ったの」などと大っぴらに言うことは、ちょっとはばかられる感じです。
 ところが、ニューヨークの若者たちはいま、ごく普通にティンダーで出会い、つきあっているのです。

シーリー兄弟

ブルックリンに暮らす双子のシリー兄弟。弟のディヴィットさん(左)は、ティンダーで知り合った女性とデートをしたことがるという。

 ティンダーは、アジア各国ではまだ普及途上です。ただ、アジア各国でも、フェイスブックを通じて出会い、つきあったり、結婚したりといったことがかなり普通になってきています。
 いっぽう日本では、「ティンダーで出会いました」というカップルにはまだ会ったことがありませんし、フェイスブックで出会った恋人や夫婦も、おそらくアジアでいちばん少ないと推察されます。そうした形での男女の出会いに対する抵抗感が、なぜか非常に強いのが日本なのです。
 ソーシャル・メディアの普及によって、私たちが「まだ見ぬ人に出会う可能性」はやくてきに高まりました。しかしそれが、男女の健全な出会いについてだけは、まだかされていないのが日本です。
 身の回り以外にも、自分にピッタリと合う素晴らしい異性は世の中にたくさんいるかもしれず、ソーシャル・メディアはそのためにも活用されてしかるべきでしょう。その意味で、ティンダーのような「真面目な出会い系アプリ」が、日本にもっと普及してもよいと感じました。
 日本でも、今年(2015年)になって、「ジョイナス(JOIN US)」というティンダーと似たタイプのスマホアプリ・サービスがリリースされました。「ジョイナス」は、「今日飲んでいる人と合流して一緒に飲めるアプリ」であり、ストレートな「出会い系アプリ」というわけではありませんが、このアプリの利用から交際が始まったカップルがたくさん生まれることは十分考えられます。
 実はつい先日、「ティンダー」を日本企業が買収しました。「ティンダー」は日本のものになったのです。「ジョイナス」とともに「ティンダー」が日本で成功すれば、「ネットを介した出会い」に対する日本人の拒絶反応も弱まっていくかもしれません。「ティンダー」をはじめとする「真面目な出会い系アプリ」が、どれだけ日本で根付くか見ものです。
「アメリカ発の流行が、やがて日本にも普及する」というケースが多いことを考えれば、「真面目な出会い系アプリ」は十分に可能性のある分野といえるでしょう。

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