第2回 「アジアの一歩先」を進んでいくアメリカ
第2回 「アジアの一歩先」を進んでいくアメリカ
都市部での若者の“車離れ”が世界の趨勢になる!
ニューヨークでの若者への取材で、「アメリカの若者たちが世界でいちばん先に進んでいる」という面も見えてきました。
「アメリカ発の流行」が、少しあとにアジア各国でも流行するということはこれまでにもたくさんあったわけですが、そうした傾向は今後も変わらないと確信しました。今後のアジアのビジネス、日本のビジネスを考えるうえでの有益なヒントが、アメリカにはたくさん転がっているのです。
一例を挙げれば、「自動車を個人では所有しないライフスタイル」が、ニューヨークの若者たちの間ではすでにあたりまえになっているということです。
アメリカといえば、「自動車大国」というイメージが根強くあります。戦後の日本がモータリゼーション(車社会化)を推進するにあたっても、最大のお手本はアメリカの車社会でした。
そのアメリカでさえ、「自家用車を持つことにまったく関心がない若者」が増えているのです。また、「環境に与える影響を配慮して、車は持たない」と言う若者もいました。
もっとも、今回取材した若者の多くはニューヨーク在住でしたから、安易な一般化は避けなければなりません。ニューヨークは家賃が非常に高く、当然駐車場代も高いので、若者が自家用車を所有するハードルが高いのです。ニューヨークのマンハッタンでは駐車場代が、日本円にして月平均7万円程度だそうです。銀座のある東京都中央区で月平均4万5000円程度ですから、いかにニューヨークの物価が高いかが窺い知れます。
とはいえ、ニューヨークという地域の特殊性を差し引いても、アメリカの若者たちが「べつに車なんて欲しくないよ。必要なときはカーシェアリングしたり、レンタカーを借りればいいし・・・」と口を揃えて言うのは、僕にとっては驚きでした。
ちなみに、ニューヨークでは、2013年6月からシティバイク(citi bike)と呼ばれるバイクシェアリングサービス(自転車シェア)が始まっています。

ニューヨーク市内に設置されているシティバイク
市内のいたる所にステーションと呼ばれる駐輪場があり、市民はもちろん旅行者も簡単に利用ができます。サービス開始時で、自転車は6000台、ステーションは300以上、といいますから、こうした動きは、「自動車を保有しなくてもいいライフスタイル」を後押ししているかもしれません。
僕が若いころには、自家用車というのは実用品であると同時にステータスシンボルでした。しかし、いまの若者にはもう、「車をステータスシンボルにする」とか、「車に見栄を張る」という発想そのものがないのです。
日本でも、都市部においてはカーシェアリングがかなり普及してきました。それでもまだ、「カーシェアあたりまえ」というレベルにはほど遠いでしょう。しかし、ニューヨーカーたちにとってはすでに、「車は所有するものではなく、必要なときだけシェアするもの」になっているのです。
そのことをビジネスの視点から考えるなら、「今後の日本でも、カーシェアリング関連ビジネスはかなり有望だ」ということになります。
日本で「若者の車離れ」が指摘されて久しいですが、日本の自動車業界はそれに対して、対症療法的な対応をするにとどまっているように思います。つまり、若者にウケがよさそうなスポーツカーを開発してみたり、逆に若者層は切り捨ててシニア層に狙いを定めてみたり・・・といった対応です。
しかし、ニューヨークの若者を取材して感じたのは、「都市部における若者の車離れ」が、日本にかぎらない世界的趨勢になっていくだろうということです。
「都市部の若者は、自家用車を所有しない」――これが、今後の「あたりまえ」になっていく可能性があります。自動車メーカー側も、そのことを覚悟して、腹をくくることが必要になってくるかもしれません。それは、「都市部では若者には車は売れない」を前提として、カーシェアリング・ビジネスを自動車メーカーが率先して推進するといった、ビジネスモデルの大転換が必要になるかもしれないといったことです。