【書評】『対決! 日本史』――異色な組み合わせの日本史対談

【書評】『対決! 日本史』――異色な組み合わせの日本史対談

[著者]佐藤優 安部龍太郎 [評者]岡崎武志/書評家

これはまた異色な組み合わせによる日本史対談だ。安部龍太郎は分かる。『信長燃ゆ』を始め、優れた歴史小説を多数生み出した作家だ。日本史を語る相手として佐藤優を提案された時、「内心二の足を踏んだ」と言うがこれも分かる。いや、分かるでしょう?
しかし、結果は予想以上にうまくいった。安部の「長年外交官として働き、この国を外からとらえる目をやしなったせいか、日本史についての視野が広く、事実に即した分析が鋭い」という佐藤評が、その通りだからだ。単なるを囲んでの歴史談義、というはんちゅうを本書は遥かに超えている。


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『対決! 日本史 戦国から鎖国篇』(小社刊)

全八章で扱う時代は戦国から鎖国の辺りまで。もっとも日本史のじょうによく乗るが、二人は「世界の大航海時代の中から」と、「イエズス会の活動」という新しい切り口で歴史を読みかえてみせた。
「鎖国史観」の誤りは、国内だけに目を向けて語られてきた点にある。戦国時代、すでに大航海時代が始まり、日本はヨーロッパと出会い、「ポルトガルとの交易によって『農業から商業へ』と日本全体が変化していった」と佐藤が指摘。種子島の鉄砲伝来について安部は、おう不足のポルトガルが、鉄砲を売り込むとともに、種子島で火薬を作ることを考えたからだと言う。すかさず佐藤が「総合商社が考える現地生産の発想です」とそれに応える。
日本史を世界史のダイナミズムの中でとらえなおし、現代に通じる問題として提起する。知識が豊富なだけでなく、今に生きる二人の視野の広さ、現状分析の確かさにおいてこのコンビは絶妙である。

イエズス会の受容における信長、秀吉の違いを語る段もじつにスリリング。佐藤は信長がイエズス会を拒絶していなければ「日本は植民地化されていたはず」と断言し、例証を挙げる。このあたり、歴史の現実が死蔵されず、生々しく読者に訴えかけてくるはずだ。名手二人のキャッチボールは小気味よく、全ページに創見がある。巻末に詳しい後注と、関連年表付き。手に汗を握ってお読みください。(『潮』7月号より転載)

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