対決!日本史

第5回 仏法伝来とキリスト教の布教

第5回 仏法伝来とキリスト教の布教

このほど安部龍太郎氏(作家)と佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)の対談本『対決! 日本史 戦国から鎖国篇』(発売日2020年6月5日 予約受付中)が上梓されるにあたって、本書の一部を「潮WEB」で無料配信します。第3回までの配信分が、『対決! 日本史 戦国から鎖国篇』の第1章「乱世を生き延びるための『史観』」。第4回からが第2章「歴史から読み解く日韓関係」となります。

朝鮮半島と北部九州を結ぶ「環玄界灘国家」の時代

佐藤 2018年6月12日にトランプ大統領と金正恩委員長の米朝首脳会談が実現してから、朝鮮半島をめぐる地政学は劇的に変化しています。1953年に朝鮮戦争が休戦すると、朝鮮半島の北緯38度線に軍事境界線ができました。これによって南から北への往来ができなくなったわけですから、地政学的に言うとあれは「北朝鮮が水没した」のと同じなのです。
安部 北朝鮮が水没し、韓国は中国大陸とは地続きではない事実上の海洋国家になってしまった。
佐藤 それから韓国は、海洋国家としての発展をずっと遂げてきました。今日本のGDP(国内総生産)の16%が貿易ですけれども、韓国はGDPの38%を貿易が占めます。韓国は日本以上の海洋国家なのです。
 このままいけば、近未来に米朝国交正常化が実現し、南北朝鮮の融和も進んでいくでしょう。すると「水没した北朝鮮」の地政学的埋め立てが完成し、韓国は急速に大陸国家・中国へと引き寄せられていきます。


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『対決! 日本史 戦国から鎖国篇』(小社刊)

 中国・北朝鮮・韓国ブロック対日本のたいという構造は、日本としては極力作るべきではありません。そうなれば、今まで38度線にあった緊張線が対馬つしまかいきょうまで下りてくるからです。政治ではさまざまな対立があっても、宗教人の交流、小説家の交流、ビジネスなどありとあらゆる民間外交のチャンネルを使って、重層的な日韓関係に歩留まりをつけていかなければなりません。福岡や北九州は歴史的に韓国との結びつきが強いですから、とりわけ重要です。
安部 何しろ福岡から大阪へ飛ぶよりも、福岡からソウルへ飛ぶほうが近いですからね。1998年10月、韓国のキムデジユン大統領は日本の国会で次のように演説しました。

〈わずか50年にも満たない不幸な歴史のために、1500年にわたる交流と協力の歴史全体を無意味なものにするということは、実に愚かなことであります〉

 天皇「即位の礼」出席のために来日した韓国のナギヨン首相は、学生との交流会でこの演説を引用したものです(2019年10月23日)。金大中大統領や李洛淵首相が言うとおり、日韓の間には1500年に及ぶ歴史的な付き合いがあります。古代に朝鮮半島南部にあった任那みまなといった国家と北部九州は、「かんげんかいなだ国家」とも言うべき密接な国家群を築いていた時期があると僕は見ています。
 その後朝鮮半島が新羅しらぎ百済くだらこうに分かれると「環玄界灘国家」は消滅せざるをえなくなりました。続いて新羅一国時代が訪れると、660年に百済が滅ぼされ、これを再興しようとして出兵した日本兵もはくすきのえの戦い(663年)で大敗します。さらに5年後(668年)には高句麗が滅ぼされました。このとき、実は朝鮮半島から大量の難民が日本に入ってきています。
佐藤 当時の日本人のうち、おおよそどれくらいの割合が朝鮮半島にルーツをもつ人々だと推測されますか。
安部 815年(こうにん6年)に天皇の命令で『しんせんしょうろく』がへんさんされました。当時の人々の名字のルーツを調査したところ、1182の名字のうち326が「しょばん」すなわち渡来人なのです。
佐藤 4分の1以上ですね。
安部 これだけ多くの渡来人が、日本人と同じ文化圏、同じ生活習慣のもとで暮らしていました。これは重要な歴史的事実です。
佐藤 日本に仏教を伝来させたのは、中国大陸であり朝鮮半島です。仏教なくして日本文化はありえません。朝鮮半島のおかげで、日本の文化と思想の骨格が形づくられたのです。
安部 仏教伝来については、百済経由と高句麗経由の2ルートがあったと言われています。
佐藤 朝鮮半島抜きにしては、日本の骨格を形づくる仏教伝来はありませんでした。その意味では、韓国は日本にとってまさに「文化大恩の国」なのです。

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