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第1回 ニューヨークの若者も「さとり世代」化している!?

第1回 ニューヨークの若者も「さとり世代」化している!?

ニューヨークの若者たちにも「さとり世代」化は広がっている

 ニューヨークでは、20代中心の若者たちに、彼らの住まいにおじゃましてじっくり話を聞きました。また、若者にくわしいジャーナリストや社会学者などの識者にもインタビューを行い、アメリカの若者たちが置かれた現状についてうかがいました。

 それらの取材をふまえた総論的な印象として、「ニューヨークの若者たちも『さとり世代』化している」ということを強く感じました。

 僕は「さとり世代」という言葉を広めた一人でもありますが、かんたんに言えば、“何かにつけて欲望が希薄で、「悟った」ように見える若者たち”を意味します。

 アメリカの若者といえば、「アメリカン・ドリーム」という言葉が象徴するように、上昇志向が強いイメージがあると思います。一獲千金いっかくせんきんを狙うとか、プールつきの豪邸で暮らしたがるとか、とにかく社会の中で「いちばん上」を目指してがむしゃらに頑張る……というイメージです。

 ところが今回、ニューヨークで会った若者たちは、一人としてそのような「アメリカン・ドリーム」を追っていませんでした。むしろ、「恵まれない子どもたちのために仕事をするNPOで働きたい」とか、「環境問題の改善のための仕事がしたい」などという社会貢献の志向をもつ若者が多かったのです。

 そして、みな一様に、「豪邸が欲しい」とも「高級車が欲しい」とも思っておらず、住まいはルームシェア、車は持たない、などというシンプルなライフスタイルで暮らしていたのです。

 また、「寝る間も惜しんでバリバリ働く」という働き方はあまり見られず、むしろワークライフバランスを重視する姿勢が強く見られました。仕事はそこそこで切り上げて、余暇の時間を大切にする。それも、派手なレジャーに走るよりも、ジョギングしたり、友人やパートナーとゆったり家で過ごしたりすることを重んじていました。

 そして、例外なく皆、「スマホを手放せない生活」になっており、スマホを介してソーシャルメディアで友人たちとつながったり、ゲームをしたりということが、生活の大きな要素になっていました。

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フォーダム大学でソーシャルメディア研究を専門としているアリスマーウィック助教授(左)と語り合う原田曜平氏。

 要は、日本の「さとり世代」の若者たちと驚くほど似ていたのです。
今年(2015年)に邦訳が出たアメリカのベストセラーに、ヘドリック・スミスの『誰がアメリカンドリームを奪ったのか?』(朝日新聞出版)という本があります。世界一豊かで分厚いミドルクラス(中間層)を擁していたアメリカが、今や富裕層と貧困層に二極分化してしまい、「アメリカン・ドリームを目指す」ということ自体が難しくなっている、と指摘したノンフィクションです。

 アメリカの若者たちがアメリカン・ドリームを追わなくなったのも、一つには経済的要因によると思います。もちろん今でも富裕層はいるわけですから、その人たちはアメリカン・ドリームをつかんだということになりますが、アメリカン・ドリームを目指そうと思える人自体が、ものすごく少なくなっているのだと思います。

 アメリカでも日本同様、雇用が不安定になっており、フツーの若者たちにとっては「一攫千金を狙う」どころではなくなってきているのです。「リーマン・ショック」(2008年)以後はとくにそうでしょう。

 ガツガツ働いても、得られる「果実」はごく少ない――そのような状況だからこそ、仕事よりもプライベートの充実に目が向けられやすい。また、仕事で大金を稼ぐとか、自分の社会的ステータスを上げるなどいうことよりも、NPOで社会貢献をすることに生きがいを見出すようになる。
「目指せ! アメリカン・ドリーム」型から、「さとり世代」型のライフスタイルへと、ニューヨークの若者たちは大きくシフトしていたのです。

 そのような状況を目の当たりにして、僕は「アジアの若者たちのアメリカ化」の理由の一つがわかった気がしました。

 日本も、アジア各国も、アメリカも、経済状況の悪化のしわ寄せが若者たちにきているという点は共通しています。同じような経済的不遇に置かれているからこそ、共通項が多く、アメリカの流行を自分たちが取り入れることにも抵抗がない。受け入れやすいのです。

 現地をよく見ていないので推察になりますが、おそらくヨーロッパ各国の若者たちも含め、世界の先進国の若者たちは、多かれ少なかれ「さとり世代」化してきているのではないでしょうか。

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