米中の攻防と日本の選択 記事トップ

第15回〈完〉 瀋陽発 北朝鮮核危機は米中関係をどこへ導くか、そのとき日本は?

第15回〈完〉 瀋陽発 北朝鮮核危機は米中関係をどこへ導くか、そのとき日本は?

 今現在、日本の総領事館もある遼寧リャオニン省の省都・瀋陽シェンヤン市内で本稿を執筆している。同省は北朝鮮と国境を接している。瀋陽市と国境都市・丹東ダンドン市の間には約240キロの距離がある。とはいうものの、瀋陽は平壌ピョンヤンからもっとも近い中国の大都市(人口約800万人)であり、中国人民解放軍七大軍区の一つ・瀋陽軍区の総本山でもある。仮に平壌で“何か”が起こった場合、瀋陽軍区から空軍を発動し、1時間以内で首都を占拠する“パラシュート作戦”たるものの存在を解放軍関係者から聞いたこともある。

 瀋陽にいると、北朝鮮という影を直接的に感じることがある。先日、市内の繁華街の一つ西塔におもむいた。ハングル文字の看板が立ち並ぶ。この地には朝鮮族の人々が多く生活を営んでいる。韓国人もいる。長く伸びた街の一角に“平壌館”というレストランがある。文字通り、北朝鮮人が経営している。北朝鮮の地ビール、平壌のキムチ、北朝鮮産のサーモン刺し身、松茸などを堪能できる。接客をする従業員は皆北朝鮮の若い女性である。

 私に接客をしてくれた女性は23歳。平壌出身で、平壌の大学を卒業後そのまま瀋陽に派遣され、「中国語を学びながらこのお店でインターンシップをしています」とのこと。インターンシップ……中国語では「実習シーシー」と言う。彼女もこの言葉を使っていた。中国語は大学で少しかじった程度で、瀋陽に来てから本格的に学び出して半年が経つと言うが、会話はかなりりゅうちょうである。接客以外に舞台で踊ったりドラムを叩いたりしていた。多才に映る。

「実習はどのくらいするの?」

「3年間」

「長いんだね。その間一時帰国は許されるの?」

「いいえ」

 勉強や仕事以外での外出は許されるが、常に二人以上で行動することが義務付けられているという。相互監視を指すのだろう。会話をし始めて一定時間経ったからだろうか、何やら内幕うちまくっぽいことを教えてくれた。

「以前組織から逃げ出して、韓国人の方にがえった裏切り者がいた。それから管理が厳しくなった」

 試しに聞いてみた。

「仮にあなたが瀋陽で恋に落ちたとして、中国人男性とは結婚できるの?」

「できない」

「そうですか」

「いえ、一つだけ方法があります。私と一緒に平壌へ帰り、北朝鮮のために生涯働くことを金正恩、すなわち私たちのお父様に誓うことです」

1 2 3 4 5
★「潮WEB」無料アプリのダウンロードはこちら→ http://www.usio-mg.co.jp/app
top
  • 連載一覧
  • 著者一覧
  • カテゴリ一覧
  • ランキング
  • facebook
  • twitter
Copyright © 2015 USHIO PUBLISHING CO.,LTD. All Rights Reserved.