プロローグ・小倉由那の日記

 私は、鉄チャンって呼ばれるような鉄道マニアではない。鉄道や電車そのものに興味があるわけじゃなく、そこに乗車している不特定多数の人たちにかれる。
 子供の頃から、ずっとずっと電車を見てきたせいか、ギーギーと車輪がレールをこする音も不快に感じたことがない。家の裏に鉄道が通っていて、列車が通る度にコタツの上のしょ うゆびんが小刻みに揺れるのを面白がっていた女の子だった。
 裏窓を開けると、凄い音を立てて列車が緩やかなカーブを曲がっていくのが見えた。水族館の大きな水槽の魚が、こっちに向かってきて銀色のお腹を見せ、また向こうへ泳いで行くような素早さだ。あっという間に最後尾の電車の顔が遠くへ去って行く。
 みんなそれぞれに行き先があり、目的がある。喜怒哀楽、いいところ、悪いところ、きれいなところ、みにくいところ、人間のすべてが鉄の箱に入ってるって感じが好き。
 どんな人が、何を思ってどこに向かうのかを想像していると時間を忘れてしまう。ちゃんは電車が好きやね、と祖母がミルキーをくれる。だからか、いまも電車が通り過ぎるのを見ると、甘いミルクの香りがしてくる気がする。
 これまで人生の岐路、ちょっと大げさか。大事な選択をしなければならないとき、必ず電車に向かってすることがある。
 あの不特定多数の、喜怒哀楽の大きな魚に、手を振る。自分の決心が揺らがないように、誓いを立てる。進学も、就職も、引っ越しもそして恋も……。だからといって願いが叶うこともなかったけれど、私にとってそれは一種の信仰のようなものだったのかもしれない。自分で自分の背中を押す儀式なんだ、きっと。
 ああ、今日も電車の走る音がする。
 大好きなレールのきしみ、金属と金属が競い合ってかなでる悲しい泣き声が耳に、頭に、そして胸に染みる。

第一章 動 揺




     1


 この町で『本宮もとみや精神クリニック』を開設して二年、もと みやけいろうはアルバイトの口を探さねばならないと真剣に思い始めていた。京都と奈良の間にあるそう らくぐんせい かちょうはいくつかの大学が誘致され、国立国会図書館関西館や大手企業の研究開発機関などもあり、それに伴いマンションや一戸建ての宅地開発も進んでいた。
 学生や研究者などが多く集まれば、それぞれの立場でさまざまなストレスに悩む人口も増える。そう言ってクリニック開設を勧めてくれたのは、経営コンサルタントをしている高校時代の友人、さわ たりきょう いちだ。
 その恭一に、思ったほど患者がきてくれない、と愚痴を漏らすと、
「まずは三年、踏ん張れ。そうすれば俺が言ったことが正しかったと笑える日がくる。感謝してもしきれないから、有馬ありま温泉にでも招待したいって言ってくるぞ」
 とすばかりだ。
 当座の運転資金も底をつきかけていて、ローンの返済にも工夫を要するようになってきた。
 このところ看護師として手伝ってくれている妻、澄子すみこのため息が増え、視線が厳しくなっていくのを感じている。兵庫の大学の医学部に入学して八年間学び、総合病院の精神科勤務医として経験を積んで、やっと夢だった自分のクリニックを始めたのが四十三歳。この歳で他院でのアルバイトをするのは気が重かった。
 心療内科を診療科目にいれている病院では、精神科医の需要はまずまずあるはずだ。医師専門の求人サイトにアクセスすれば、すぐにでもアルバイト先は見つかるだろう。
 厳密に言うと心療内科と精神科の守備範囲は異なるが、患者サイドの受診のしにくさから精神科の看板を高らかに掲げる病院は少ない。それゆえ心療内科で精神科医が働いているケースは多く、たまに後輩と顔を合わせることがあった。
 アルバイトをする友人の医師からも、後輩の補助として働いているという話を聞くと、どうも二の足を踏んでしまう。
新患しんかんよ」澄子が診察室に飛び込んできた。
「そんなにテンション上げるなよ」
「久しぶりなんだから、仕方ないでしょう」
「悩みを抱えて、やっとの思いで電話をかけてくる。そんな患者さんの気持ちを考えれば、手放しには喜べない、そうだろう?」慶太郎はデスクから立ち上がり、診察室にある大きめのソファーに尻を落とす。
「あほらし。予約、明日の午後四時に入れましたからね」澄子はさっさとドアの向こうに消えた。
 恭一の助言通り願ってもない場所だと、澄子の実家の敷地内に建てた自宅兼クリニックだからか、養子になった覚えはないのに、近所からは澄ちゃんのお婿むこさんとしか呼ばれない。義父は大手医療器機メーカーの重役、義母は学研都市総合病院の外科病棟の看護師で、一人娘の婿には絶対に医師をと手ぐすね引いていたと後で聞かされた。
 精神科医のくせにそんな術数にまんまとハマるなんて情けない。恭一が、酒を飲むと必ずと言っていいほど口にするフレーズだ。精華町にクリニックをと勧めたことを棚に上げていい気なものだ、と互いに好きなことを言い合える友人は大学時代にはできず、やっぱりことあるごとにさかずきを傾ける相手は恭一だった。それを彼は腐れ縁だと笑う。
 むろん患者は皆無かいむではない。午後からアルコール依存症の女性の予約が入っていた。つまり午前中は閑古鳥かんこどりがないているという惨状だった。
 慶太郎はタブレットの電源を入れた。クライアントのデータを確認する前に、医師アルバイト情報のサイトを開いた。
 最近、老年医療関係の求人が増えた。認知症ケアの一環で、患者本人ではなくその家族の心身症をる。
 しばらく、ここから通える範囲にある病院を探していたが、三年踏ん張れという恭一の日焼けした顔が浮かんできて、サイトを閉じた。
 踏ん張ってみるか。


     2


 午後三時五十分。予約の患者は十六歳の女子高校生だった。思春期の患者には人一倍神経を使わねばならない。
 クライアント名は、棚辺たなべ春来はるき、母親のはると来院した。予約の際には、主訴なども不明でとりあえず相談がしたい、と言っていたそうだ。
 慶太郎は少しウエーブのかかった長めの髪をぐしで整え、白衣から覗く猫柄のネクタイを締め直した。学生時代は剣道部に所属し、それなりに女性にもてた。侍っぽいのは名前だけではなく、顔立ちもそうだと言われたことがある。ただ、剣の腕は大したことなく、大きな大会の出場経験はない。ようするに上背だけ一人前で動きが鈍く、弱かった。クラブでも後輩にどんどん抜かれる経験は、弱気な慶太郎にますます自信を失わせていった。そう分析しては、過去の悔しさをバネに変えようともがいている。
 そんな自分を見透かされてはいけない、とクローゼットの中から木刀を出し、一〇回だけ素振りをするのをルーティンにしていた。
 木刀を元の位置にしまうと、澄子からの内線が入った。
「棚辺さん、お見えになりました」
「どうぞ」
 応接セットの前に立って、患者を出迎える。
 二人の背丈はほぼ同じで、母親がふっくらし、娘の春来は紺色の制服姿だったけれどかなり痩せているのが分かる。髪型も同じショートボブだというのもあって、よく似た母娘だという印象だ。
 春来は支えていた母親の手を振り払うようにして、自分だけソファーに座った。
「お母さんもどうぞ」
「はい」
 母親は身体全体でお辞儀をして、腰を下ろした。白っぽいワンピースに若草色のカーディガンが幼い感じに映る。若く見えるがだろう。
 ゆっくり座りながら慶太郎は、母親に住所や連絡先などの他、春来の病歴、これまで飲んだ薬などのアレルギーの有無を記入する初診カードを渡す。
 母親が書き終わるのを待つ間に、タブレットをテーブルの上に用意した。
「ここに来られたのは、春来さんご本人の希望ですか。それともお母さんのご希望ですか」
 いつもの質問だ。自発的な来院と無理やり連れてこられたというのとでは、本人の問題意識に差がある。自ずと対応も変えざるを得ない。
「私が言い聞かせて連れてきました」
 母親が申し訳なさそうに言った。
「無理やりって感じですか」
「これまでなかったことだったので、ひどくなる前にと思いまして」
「これまでになかったことというのは、どういったことです?」
「この子、急にものを食べなくなってしまって」
 そう言う母に顔をそむけるように春来は床を見ている。
「食べないというは、どの程度ですか」
「食事も間食もしないんです」
 母親は眉をひそめて、春来を一瞥いちべつする。
「そうですか。では春来さんに伺います」
 慶太郎はわざと大きな動作で、春来のほうへ身体を向ける。春来に聞いているんだということを態度で示さないと、すべてを母親が答えてしまうからだ。
「春来さん、今日はよく来てくれましたね。緊張しないでいいですからね」
 春来が床を見たまま、こくりとうなずいた。
「ご飯が食べられないということですが、お腹、減らないんですか」
 春来は首を振った。
「好き嫌いがあるんですか」
「この子は何でも」
 そう言いかけた母親を慶太郎が手で制し、
「申し訳ありません、お母さん。いまは春来さんから話を聞きたいんです」
 と微笑ほほえみかけた。
「でもこの子、内気でして」
「お母さん、僕に任せてください」
「は、はい」
「一緒に深呼吸しましょう」
 慶太郎がまず、大きくお腹をふくらませて、深呼吸した。何度か繰り返しているうちに春来も背筋を伸ばして呼吸を始める。隣の母親も一緒に肩を上下させていた。
 春美は娘のことが心配でしようがないようだ。おそらく娘が失敗する前に手を差し伸べてしまうタイプだろう。
 思春期の春来は、どうもそれがうっとうしく感じ始めているようだ。
「好き嫌いはないんですか」
「はい」
 耳に神経をそそがないと聞こえないくらい小さな声だった。
「お腹が痛いとかはどうですか」
「ない、です」
「食欲は、どうです?」
「ある……かな」
「お腹はくんですね」
 春来はうなずく。
「お腹が空くのなら、食欲はあるということなんです。いつから食べられないんですか。分かる範囲でいいですよ」
 慶太郎はソファーから手を伸ばし、自分のデスクにある卓上カレンダーを取って、春来の前に置いた。
「今日が、十月三日だから、十月に入ってからかな?」
「九月三十日……朝」
「よく覚えていますね」
「忘れられない、です」
 春来の言葉は何か具体的なものを指している、と慶太郎は感じた。
「忘れられない? それは何ですか」
「女の人」
「何なの、そんなことお母さん聞いてないよ」
 母親が慶太郎と春来の会話に割って入ってきた。
「お母さん、ちょっとお部屋の外で待っていてくれますか」
 慶太郎は澄子に内線で事情を話した。


 渋々母が出て行くと、閉まるドアを春来はじっと見ていた。大きな瞳に不安の色が差したようだ。
 母親依存から完全に抜け出してはいない証拠だ。
「ごめんね、お母さんが食べられなくなったんじゃないんで、少しの間だけ外にいてもらうね。では改めて聞きます、九月三十日の朝、何があったんですか」
「新聞に、載ってたんです」
「ほう新聞に載っていた」
 鸚鵡おうむ返しは話を引き出す基本だ。深くうなずき、
「その女の人は、知り合いですか」
 と慶太郎は訊いた。
 春来は首をかしげて、左右に振った。
「全然知らないってわけじゃないってことかな」
ぐらさん」
「小倉さんっていうんですね」
 春来は返事をせず、カバンから取り出した新聞の切り抜きを静かにテーブルの上に置く。その丁寧な置き方に、小倉という女性が春来にとって嫌な存在ではないことが推察される。
「見せてもらいますね」
 慶太郎はきれいに切り取られた小さな新聞片を手に取った。



 自殺か、スーパーのアルバイト女性、自宅アパートで死亡。
九月二十九日の夜、地元精華町◯☓のスーパーマーケット「ハッピーショッピー」に勤めるアルバイト店員小倉由那さん(三四)が自宅アパートで死んでいるのを、無断欠勤を不審に思い、自宅を訪ねた店長が発見した。小倉さんに目立った外傷や着衣の乱れもなかった。また現場に荒らされた形跡もなく、カップに薬物が混入していたことや、傍らに遺書らしきメモが残されていた状況から、京都府警木津川署は自殺の可能性が高いと見ている。


「これを読んでから、ご飯がのどを通らなくなったんですか。小倉さんが亡くなってショックを受けたということですね」
 自殺をしたかもしれない小倉由那という女性の死に、春来が動揺して摂食障害を起こした。由那との関係がそれほど濃厚ではないらしいが、感受性が強い子にはまれにある心的外傷後ストレス障害のようだ。
「私……お腹が痛くなって」
「小倉さんの死が悲しかったんですね」
「分かりません。話したこともないのに……」
「うん、気持ちの優しい人によくある症状です。知っている人が急に亡くなったんですから、ある意味仕方のない状態かもしれません」
「私、亡くなった日、電車の窓から見た」
「ちょっと待ってください。春来さんは電車に乗ってたんですね」
「ドアの前に立ってて」
 春来は、京都市内の高校に電車で通っていて、とくに帰りはよほどのことがない限り同じ車両の同じ位置にあるドアから外を眺めていた。
「毎日、その人が何もない田んぼの前に立ってるから」
「それを見てた。直接会ったことはないんだね?」
「ないです」
「なるほど」
 だから知り合いではないけれど、知った人物なのか。
「その人が、新聞に載っている小倉さんなんですね」
 新聞の写真は小さく不鮮明だった。
「エプロン。ひよこマークの上にハッピーって書いてあるんです」
「ハッピーショッピーによく行くんですね。そこで小倉さんを見かけたことがあった」
「いえ、ないです。新聞の写真と何となく似てるし、ハッピーショッピーに勤めてたってあったから」
「そうですか。それほど親しくなくても、いつも見ている人が亡くなったんだから、強い衝撃があるのは当たり前の反応です」
 と言ってみたが、刺激が多い時代にあって、そこまでナイーブな子は珍しいのではないかと感じる。このくらいの年頃のほうが、案外残酷ざんこくなことを考えることがある。それも、ある程度正常な成長過程の一つだ。
「ちがいます」
 これまでにない大きな声だ。顔も少し紅潮している。
「えっ、ちがう? 何がちがうんですか」
「あの人、自殺じゃない、と思う」
「ちがうというのは、記事の内容が間違っているってことですか」
「そんな感じじゃなかったから」
 春来はお腹を抱えるように背を丸めた。
「どうしたんですか」
「お腹が」
 春来の手のひらが鳩尾みぞおちあたりを押さえている。胃が痛むのかもしれない。その上、浅い息をしていた。
「深呼吸してみましょうか。それでも治まらなかったら、お薬を出しますから。気を楽にして、まずは大きく息を吐き出しましょう」
 春来は言った通り、大きく息を吐き出し、そして吸う。ボートをぐように身体が前後した。
 顔を上げた春来に慶太郎が声をかける。
「大丈夫ですか。痛みが治まったら今日はこれくらいにしましょうか」
「ううん。ご飯、食べられるようになりたいから」
 さらに赤みを帯びた顔で春来が言った。
「分かりました。では続けましょう。どこまで話しましたっけ?」
「自殺する感じじゃなかった」
「そうでした。なぜそう感じたのか、先生に話してくれますか」
 春来はゆっくりだけど、しっかりうなずいた。眼球運動で、彼女の思考がめまぐるしく働いていることが分かる。
 患者の最も気になっていることを引き出し、そこから問題点をさぐる。問題点が明らかになれば回復への糸口を見つけることができるのだ。
「いつもとちがったんです。私、実は」
 春来がうつむいた。そして自分の左足を見つめる。
「左足が、すこし悪いんです」
 入り口からの数歩だったが、母親が春来の右側から支えていた。その力の入り具合が強いと感じた。母親が左利きでない限り、普通なら春来の左側に立って右手で支える。初診カードへの記入は右手だった。
「普段、足を補助するものは?」
「杖、あるけど使いたくない」
「痛みはあるの?」
「全然。でも力を入れてないとよろける。ぴょこってなって、たぶん力が弱いから」
 春来は筋力をつけることと、バランスが取れるようにするためにわざと電車では座席に座らないのだと言った。
「揺れるのを利用して鍛えようとしているんですね。素晴らしいじゃないですか」
 慶太郎の投げた笑顔に応えるように、春来が顔をほころばせた。照れ笑いでも、口角が上がると気持ちはほぐれるものだ。
「で、毎日ドアの前に立ち、外を眺めていると小倉さんが立っていた」
 整理して話しやすくする。
「その日、その日だけなんです。小倉さんが手を振ってくれたのは。嬉しくて私も振り返したら、笑ってくれた」
「これまでは立ってて、電車を見てるだけだった?」
「そうです。手を振ったのその日が初めてです」
「うーん、それはお別れの印だったのかもしれませんよ」
「手を振って、ぐっと握り拳をつくったんですよ。さよならとは思えないです」
「死ぬ決心をしたのかも」
 意地悪に聞こえるかもしれないけれど、自発的に何が問題なのかを考え始めているときには必要な問いかけだった。自己解決へのプロセスだ。
「私、とても悩んでいたんです」
 話がいろいろな方向へ飛ぶのも、悪い傾向ではない。自分をさらけ出してもいい、気を許してもいいと思っているのだ。
「悩みって?」
「ダンス教室に通うかどうか。私ダンスが大好きなんですけど、足のせいであきらめてて。足首がゆがんでるし、ちゃんと伸びないし、左足だけできれいに立てないから……。でもばん どうたま さぶろうさんも私と同じように足に後遺症があるってテレビで観て、できるかもって。私は日舞にちぶじゃなくブレイクダンスなんですけど」
「激しい動きのものですね。ストリートダンスかな」
「そう。足技も多いし。でも何かパッと気が晴れる感じがして、好き」
「ダンスが本当に好きそうですね。素晴らしいことだ」
「でもお母さんは……」
「お母さんは?」
「分かってくれてない」
「あなたがダンスをすること?」
「何でも反対はしない。だけど、できっこないって思い込んでる。それが見え見え」
 ダンスに興味をもつ前に、チアリーディングをやってみたいと思ったことがあって、それを母親に話したときの顔が、春来は気になったのだと言った。
 ハンディを負った人に共通する猜疑さいぎしんだ。
「頭ごなしに無理って言われるのもいやでしょう?」
「でも、何でもチャレンジはいいことだって言いながら、どうせ無理よ、なんて思われてるのも、やだ」
「なるほど。そういう気持ちだったんだ」
「でも、駅でダンス教室のチラシ配ってて。それ見たらやっぱりやりたいって思った。いつお母さんに教室へ通わせてって言おうかとずっと悩んで。今日は言おう、絶対明日は打ち明けるって。そしたら小倉さんが手を振ってガッツポーズを送ってくれた」
「ガッツポーズか」
「嬉しくて」
 春来はその日の夜、母親にダンス教室のことを切り出せたのだと言った。
                                                   (つづく)