西鉄ライオンズの黄金期を背景に男の友情を描く、渾身の初長編

西鉄ライオンズの黄金期を背景に男の友情を描く、渾身の初長編

西鉄ライオンズの黄金期を背景に男の友情を描く、渾身の初長編

「プロ野球がいちばん輝いていた時代」を描く

――西鉄の三連覇は、平岡さんが生まれる前の出来事ですね。
平岡 ええ。約60年前の話ですし、僕にとっては歴史小説を書くようなものでした。ただ、当時のライオンズについての文献は山ほどあって、とくに、三連覇した日本シリーズについては一球単位で記録が残っています。“歴史小説”として考えれば、これほど史料に恵まれた作品もありません。
 苦心したのはむしろ、主人公たちがライオンズの存在感に負けないようにすることでした。当時のライオンズの選手と監督はキャラが立っていてエピソードも面白すぎるので、ヘタをすると主人公がかすんでしまいかねないので……。
 ヤクザを主人公にすることには、ためらいもありました。でも、西鉄の「野武士軍団」に拮抗きっこうする存在感をもたせるには、これくらい強烈なキャラクターでないとダメだな、と考えたのです。「土木会社の社長でもあり、せいぎょうのほうできちんと仕事をして、周囲から信頼されている」という設定にすれば、ぎりぎり許されるかな、と……。
――作品に飛びかう博多弁がとても自然でいきいきしていますが、平岡さんご自身は神奈川出身ですね。
平岡 博多弁については、義父――妻の父が“監修役”を買って出てくれました。義父は大分の人ですが、博多に7年間住んでいましたし、語学通みたいなところがあって、「大分弁と博多弁の現在進行形はこう違う」とか、文法まで細かく教えてくれたんです。この小説の博多弁が自然だとしたら、それは義父のおかげです。
――プロ野球人気の陰りが指摘されるいま、あえて「プロ野球がいちばん輝いていた時代」を描いた作品を世に問うたわけですが……。
平岡 僕自身、野球が大好きで、少年野球も高校野球も経験しています。わが家は祖父から三代続いた巨人ファンで、僕はファンがこうじて「報知新聞」の就職試験を受けたほどです。ただ、「巨人が勝ったらうれしい。負けたらくやしい」という思いが、ある時期から薄れてきてしまいました。
 それでも僕は、「人としての基本」のようなものを少年野球で学んだと思っています。礼儀作法とかちょうようの序とか、組織の中の個人のあり方とか……。野球は“男の子の学び”でもあるのです。そういうことまで含めた「良き野球文化」が日本にはあると思うし、その意味での野球愛は、いまでもあります。
――その野球愛が全編にあふれた作品だと思います。西鉄ライオンズは物語の「背景」ではありますが、大下弘だけは主役級の重みで描かれていますね。
平岡 じつは、当初は稲尾を主役級で描こうと構想していたんです。西鉄が三連覇できたのは鉄腕・稲尾がいたからですしね。でも、この作品の取材で当時を知る人たちに話を聞いたら、みなさん稲尾よりも大下のことを熱く語るんです。それで、ある人が、「野球の主役は野手だ。野手なら、シーズン中は毎日姿を見られるからだ」と言っていたのを思い出して、大下を主役級で描くことを決めたんです。

1 2 3
★「潮WEB」無料アプリのダウンロードはこちら→ http://www.usio-mg.co.jp/app

関連書籍紹介

61ksszb6fjl-_sx343_bo1204203200_

『ライオンズ、1958。』(角川春樹事務所/1600円+税)

Amazonでのご購入はこちら
top
  • 連載一覧
  • 著者一覧
  • カテゴリ一覧
  • ランキング
  • facebook
  • twitter
Copyright © 2015 USHIO PUBLISHING CO.,LTD. All Rights Reserved.