西鉄ライオンズの黄金期を背景に男の友情を描く、渾身の初長編

西鉄ライオンズの黄金期を背景に男の友情を描く、渾身の初長編

西鉄ライオンズの黄金期を背景に男の友情を描く、渾身の初長編

 平岡陽明さんの初の長編『ライオンズ、1958。』は、西鉄ライオンズが日本シリーズ三連覇を成し遂げた時代の博多を舞台に、ヤクザの田宮と地元紙の西鉄番記者・木屋の奇妙な友情を描いた、「ハードボイルドな人情物語」だ。当時の国民的スターである西鉄の主砲・大下弘が、主人公2人をつなぐ架け橋となる。
「神様、仏様、稲尾様」の見出しで知られる伝説的な1958年の日本シリーズ第5戦(投手の稲尾和久自らがサヨナラホームランを放った)が、物語のクライマックスとなる。その日、田宮は己の舞台で命を賭けた戦いに挑むのだ。試合と田宮の戦いが並行して進む展開はスリリングであり、彼と木屋の立場を超えた友情が涙を誘う。一気読み必至の傑作である。この作品にかけた思いを、平岡さんにうかがった――。

「野球を背景に、一つの時代を描ききる長編を」

――初長編に、どのような意気込みで臨まれたのでしょう?
平岡 僕が受賞した「オール讀物よみもの新人賞」は短編の賞でしたし、受賞からの3年間で雑誌に発表してきた作品も、すべて短編でした。その間、「松本清張賞」を目指して長編を書いてみたのですが、予選落ちを2度繰り返しまして……。
 そんなとき、角川春樹社長から、「きみの小説、読んだよ」と声をかけていただきました。僕は、フリーになる前は角川春樹事務所の編集者でした。角川社長には、そのころからずっとお世話になっているのです。
 そのときに社長から、「野球を背景にして一つの時代を描ききるような長編を、ウチで書いてみないか?」というありがたいお話をいただきました。それが、この作品の発端です。
 じつはこの『ライオンズ、1958。』も、いまある形になるまでには、キャラクターを変えたりストーリーを書き換えたりと、大幅な書き直しを2度ています。それくらい、僕にはまだ長編の書き方がわかっていなかったのですね。
 そんな経緯があるので、今回、長編が初めて本になったことは感慨深いです。ピッチャーとして初先発して、ヘロヘロにはなったけど9回まで完投したような気分ですね。(笑)
――角川社長からの注文は、「野球を背景に」というだけだったのですか?
平岡 社長に読んでいただいた僕の小説が、たまたまゴルフを題材にした短編(「床屋とプロゴルファー」)だったんです。そこで、次のように言われました。
「ゴルフの小説もいいけど、ゴルフでは国民全体の背景にはならない。すべての日本人が『あの時代ってこうだったね』と思いをたくせるのは、やっぱりプロ野球であり、一つの球団だよ。阪神タイガースや阪急ブレーブスを描いた小説なら、ウチからも出ている。そういうものを、きみも考えてみないか?」
 それで頭に浮かんだのが、巨人のV9(9年連続リーグ優勝)と西鉄ライオンズの日本シリーズ三連覇でした。
――なるほど。どちらも日本人全体がきょうれつに記憶しているドラマですね。
平岡 西鉄ライオンズのほうを選んだのは、僕の妻が大分出身で九州に縁があったのと、編集者時代に豊田泰光やすみつさん(西鉄ライオンズ黄金時代の主力打者の1人)を取材したことがあって、そのときのお話がすごく面白かったからです。
 それで角川社長に、「西鉄ライオンズの三連覇を背景にするのはどうでしょう?」と言ったところ、「じつは、俺もそれを書いてもらおうと思っていたんだ」と。

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