「いま、公明党が考えていること」

第1回 平和を現実的にどう守るのか

第1回 平和を現実的にどう守るのか

南沙諸島にも中東にも出動しない自衛隊

 平和安全法制について「日本はいつでも戦争ができる国になってしまった」と騒いでいる人は、率直に申し上げて一種のパラノイア(へんしつきょう)としか言いようがありません。「自衛隊を地球の裏側まで送れるようになった」「平和安全法制によって、日本はフルスペックの集団的自衛権に近づいた」と言う人たちの主張もウソです。自衛権について今まであいまいだった部分を明確にし、平和をきちんと守れるようにした。これが「7.1閣議決定」と平和安全法制の本質なのです。

「平和安全法制によって日本の平和は守られている」。これを証明するための具体的な証拠を出しましょう。中国は南沙諸島で、あんしょうを埋め立てて人工島を造りました。「航行の自由」作戦を展開するアメリカは、横須賀港から南沙諸島にイージス艦を送っています。

 もし平和安全法制について国会できちんと議論し、公明党が歯止めをかけていなければどうなっていたでしょう。NSC(国家安全保障会議)の判断によって、海上自衛隊は南沙諸島にP‐3Cしょうかいを飛ばしていたはずです。イージス艦も出動させたかもしれません。平和安全法制のおかげで、南沙諸島であれだけの変化が起きても、簡単に自衛隊を動かせなくなったのです。

 2016年1月初頭、サウジアラビアはシーア派の宗教指導者を処刑しました。これにイランが反発し、イランはサウジアラビアと国交を断絶しています。中東の情勢は非常に緊迫しているわけですが、これについて「日本の存立危機事態だ」という議論は出ていません。

 ホルムズ海峡どころか、スエズ運河の運行まで止まってしまえば、海洋の物流のうち9割が止まってしまいます。中東が相当に緊迫した情勢にありながら、存立危機事態をめぐる議論は日本ではまったく出てこないわけです。なぜか。

 安倍総理はかつて、集団的自衛権が行使される場所として「ホルムズ海峡」という名前を具体的に出していました。しかし平和安全法制をめぐる議論の中で、「ホルムズ海峡で集団的自衛権を行使することはない」と前言を撤回しています。それは誰の質問に対する答えだったかというと、公明党の山口那津男代表です。(2015年9月14日、参議院平和安全法制特別委員会)

 連立与党の代表が、総理大臣がやろうとしていることを国会質疑で撤回させる。これは憲政史上初めてのことです。ただし公明党の議員は、連立与党のパートナー自民党の議員の前で「公明党はよくやった! オレたちの大勝利だ!」とは言いません。自民党にだって立場があるわけです。公明党は平和安全法制の議論を通じて大勝利したわけですが、大勝利は声に出して言いづらいのはごく当然です。

 もしかすると公明党が掲げる平和の看板には、少しくらいは泥がついたかもしれません。看板をピカピカに保つことだけにこだわり、自民党が実現したい平和安全法制には一切タッチしない。あるいは、多少看板に泥がついたとしても、自民党と対決しながら絶対に戦争が起きない体制を明確につくる。どちらがいいのか。後者に決まっています。公明党はギリギリのところで、平和安全法制に極めて重要なブレーキをかけました。

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