米中の攻防と日本の選択 記事トップ

第7回 北京発 G7外相会議と南シナ海問題――中国がナイーブになる背景と動機

第7回 北京発 G7外相会議と南シナ海問題――中国がナイーブになる背景と動機

「岸田外相の訪中は近々あると思われますか?」

「もちろんです。現在その方向で日本政府とも話し合いを続けています」

「仮に中国政府が岸田外相の訪中受け入れにちゅうちょするとしたら、その原因はどこにありますか?」

「日中関係をめぐる政治的雰囲気が良好でないこともありますが、やはりG7サミットです。仮に日本が議長国としての特権を利用する形で南シナ海問題を議題に乗せ、中国に圧力をかけるようなことがあれば、それは大問題です」

 今年3月末、対日政策にも関わる中国の外交官と交わした会話である。
 
 約10日後にはG7外相会議が広島で開催される(4月10~11日)タイミングであったが、その頃、北京を含めた中国各地で党中央外事委員会、外交部、人民解放軍、公安、地方政府、政府系シンクタンクなどの関係者らと会って話をするたびに、「加藤さん、G7会議において、日本が南シナ海問題をアジェンダとして扱うと思いますか?」というたぐいの質問を受けた。

 それだけ、中国は、核心的利益・海洋政策・対米関係・対東南アジア政策・アジア太平洋の秩序形成における主導権といった複合的な観点から南シナ海問題を重要視しており、かつ緊張が高まっている現在の情勢を前にセンシティブになり、立ち往生しているということなのだろう。
 
 習近平シージンピン国家主席は特に米国との関係、そしてその先にあるアジア・太平洋地域における主導権争い(筆者注:実際は“覇権争い”と言えるが、中国共産党は自らの戦略や政策を“覇権”ではないと頑なに主張する傾向にある)という視角から南シナ海問題を捉えているように思える。

 今年3月31日、米ワシントンD.C.で開催された核サミットに出席するために訪米した習近平はバラク・オバマ米大統領と米中首脳会談に臨んだ際、「中国は南シナ海における主権と関連する権利を断固として死守する」としたうえで、南シナ海問題についての見解を次のように示している。

「中国は各国が国際法に基づいて享受する航行や飛行の自由を尊重し、保護する。と同時に、航行の自由を口実とし、中国の国家主権や安全保障上の利益に損害を与えるすべての行為を受け入れない」

 米国に対する牽制であることは明らかである。
 
 昨今の米中関係には(1)共同作業を進めていける分野、(2)立場や意見の相違は存在するが、話し合いによって矛盾を緩和できる分野、(3)国益や価値観が真正面からぶつかり、常に緊張感が漂い、両国関係の全面的悪化を招きかねない分野という3次元の分野が交錯していると私は考えている。そして、それぞれを代表する象徴的な例を挙げてみると、(1)気候変動問題、(2)サイバーセキュリティ問題、(3)南シナ海問題、だと現段階では捉えている。

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