米中の攻防と日本の選択 記事トップ

第6回 北京発 全人代が醸し出す米中の攻防――北朝鮮の核問題と南シナ海問題

第6回 北京発 全人代が醸し出す米中の攻防――北朝鮮の核問題と南シナ海問題

「南シナ海問題」――中国は安倍首相の言動を警戒している

 次に南シナ海問題である。王毅は二つの関連する質問に答えた。

 一つ目は中国の南シナ海政策に関する説明である。中国が現在南シナ海海域において行っている“人工島”や関連設備・措置の建設を正当化し、中国が如何に東南アジアの関連諸国に対して外交努力を払っているかを説明する過程で、王毅は次のように主張した。

「中国が自らのとうしょと岩礁において防御施設を建設することは国際法がする自保権であり、自衛権である。中国は南沙諸島において最初に武器を配置した国家ではないし、もっとも多くの武器を配置した国家でもない。軍事活動がもっともひんぱんな国家ではもっとない。昨今、皆さんは軍事化の問題を議論しているが、私はこの帽子を中国の頭にかぶせることはできないと思う。かぶせるとしたら、もっと適合する国家があるではないか」

“もっと適合する国家”が米国を指していることは明らかである。と同時に、最近、南シナ海における軍事化問題を議論する際に、中国政府が米国の同盟国である日本の動き、特に安倍晋三首相の言動をかつてないほどに警戒している現状を指摘しておきたい。中国政府は日本が南シナ海に戦略的利益を見出し、それを実現するための具体的な行動に出ようとしていると認識し、対処しようとしている。

 また、王毅は航行の自由問題についても主張している。

「南シナ海最大の沿岸国として、中国は南シナ海の航行の自由をもっとも希望し、守ろうとしている。実際に、中国とこの地域の国家の共同努力のもと、南シナ海は現在世界でもっとも安全で、自由なルートの一つである。私がここで皆さんにリマインドしたいのは、“航行自由”は“横行自由”ではないということである(筆者注:中国語でこの二つの言い回しは発音やイントネーションが類似しており、王毅はそれを意識しながら比喩的に語った)。仮に誰かが南シナ海情勢をかくらんさせたり、アジアを混乱に陥れるようなことをするのであれば、中国はそれに同調しないであろうし、この地域の絶対多数の国家も許さないだろう」

 前出のように、「“航行自由”と“横行自由”は異なる」といった言い回しには王毅独自の個性や風格が表れている。「アジアを」という補語に対して「誰かが」という主語をぶつけているセンテンスから、中国政府がアジアのガバナンスにとって米国という存在と行動にフラストレーションを感じており、そんな存在を追い出したいと内心思っている現状を反映しているとも言える。と同時に、「絶対多数の国家も」という文言を使用する際に、王毅が脳裏に浮かばせ、言外に含ませた国家の(少なくとも)一つが日本であることは想像に難くない。

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