平和のために奮闘する日本人女性の善意とたくましさ

平和のために奮闘する日本人女性の善意とたくましさ

『アラブからのメッセージ――私がUAEから届けた「3.11」への支援』

[著者]ハムダなおこ [評者] 山内昌之/歴史学者・明治大学特任教授

サウジアラビアとイランの国交断絶で中東と湾岸の情勢がにわかに急を告げている。そして、アラブ首長国連邦(UAE)もイランから大使を召還してしまった。私は、そのUAEとイランに出張する2016年1月6日にこの原稿を書いている。こうした事態だからこそ、平和な湾岸地域で文化交流のために奮闘してきた日本人女性の善意とたくましさが、一服の清涼剤ともなる。

UAEのウンム・アル・クエイン出身の男性に見初められて結婚した著者は、東日本大震災に際会して募金活動に勤しむが、様々な困難に直面する。赤十字にあたる赤新月社は著者の労を快く思わず、電話で責任者に怒鳴りつけられる。日本は「大金持ちの国」だから義援金なんて必要ないという剣幕にも驚くが、日本人がイスラム教徒でないから大事件に遭遇したといった種の誤解にも悲しい思いを抱く。着物ショーをチャリティとして活用しようとしても、チケットには課税され、場所探しも大変なのだ。

場所を無料で提供すると言いつつ色々とカネをせしめるホテル、地震被害を報道する代わりに日本文化紹介番組をタダで作らせようとするテレビ局。一方で、なかなかに堂々とした偉丈夫がいるのもアラブなのだ。著者は、UAEでドバイの慈善団体「Mチャリティ」のイブラヒーム会長とめぐりあう。首長(UAE副大統領)直轄のMチャリティの会長は、著者の集めた金に何倍も援助金を付けて日本に送った。しかし、その援助金が具体的にどのように使われたのか、きちんとした証拠提出を要求する。さらには、送られてきた感謝状の宛先が「首長殿下」ではなく、「様」になっているのをどうするか・・・など。日本の天皇陛下に「様」で手紙を書くようなものだ。 

日本大使館はアブダビにあり、ドバイには総領事館がある。この関係を理解しつつも、大使館がドバイの関係者にもっと親切にできないかと思案もする。色々と苦労はしても前向きに家族と一緒に湾岸で過ごす平和の日々を、今度の政治危機を乗り越えて続けてほしいと願わざるをえない。
(総合月刊誌『潮』3月号より転載)

書籍紹介

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アラブからのメッセージ――私がUAEから届けた「3.11」への支援 ハムダなおこ

発売日:2015年12月5日
本体価格:1400円(税別)

UAE在住の著者が被災地への支援を決意し、思想の相違などの困難を乗り越えた体験記。2015年「潮アジア・太平洋ノンフィクション賞」受賞作

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