見えない轍

見えない轍

作品紹介

人は誰しも「見えない轍(わだち)」に足を取られながら生きている……。
一人暮らしの女性・小倉由那がある日、自ら命を絶った。
ところが由那の姿を最後にみた女子高校生・棚辺春来は、「由那は自殺なんかしていない」と訴える。
その春来の心の叫びを聞いた心療内科医・本宮慶太郎は、独力で由那のことを調べ始めるが……。
小さなズレが違和感を生み、やがて大きな悲劇へとつながっていく──
乱歩賞作家が満を持して贈る、人間の業と再生を描いた「純文学ミステリー」の決定版。

見えない轍(わだち) 目次

  • 2018.06.18 更新
  • 連載最終回 第4章 直視〈承前〉
  • 第四章 直 視(承前) 「あなたは小お倉ぐらさんが自殺するはずない、と思っていらっしゃる。そうですね?」 「そのことでしたら先日お話ししました」 「ええ、確認です。私も自殺ではないと思います。彼女は...
  • 2018.05.10 更新
  • 連載第18回 第4章 直視〈承前〉
  • 第四章 直 視(承前)  足を引きずりながらハッピーショッピーの事務所に着いたとき、出ていた汗が引いて寒気がした。暖房をつけ、電子ケトルで湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹いれる。  親父がやってくるの...
  • 2018.04.11 更新
  • 連載第17回 第4章 直視〈承前〉
  • 第四章 直 視(承前) 「店長と専務まで容疑者にされてたなんて……それに犯人を絞ってるって、僕にですか」  床に膝ひざをついたまま、三郎さぶろうが正しょう太たを見上げる。 「平岡ひらおかさんに話を聞くの...
  • 2018.03.13 更新
  • 連載第16回 第4章 直視〈承前〉
  • 第四章 直 視(承前) 「ちょっと、ちょっと待ってくれ。どっちの味方や」  正しょう太たの体は、完全に真ま理り子こに向いていた。 「専務さん、敵も味方もありません。私も由ゆ那なさんもほんまにいつやめよう...
  • 2018.02.13 更新
  • 連載第15回 第4章 直視〈承前〉
  • 第四章 直 視(承前) 「それでも残る。もう少し期限を緩和かんわしてもいいんじゃないか、せめて他の店と同じように。そうお二人は思っていた」 「はい。私も由ゆ那なさんも、売れ残りを半値で譲ゆずってもらいます。二...
  • 2018.01.16 更新
  • 連載第14回 第3章 罪責感〈承前〉
  • 第三章 罪責感〈承前〉 「いじめる?」 「そうじゃないですか。大手は生産者や下請け、いや孫請けの業者さんに圧力をかけてコストカットを強しいてる。それが可能なんは大量に仕入れられるからや。利益率が低くなっても...
  • 2017.12.19 更新
  • 連載第13回 第3章 罪責感〈承前〉
  • 第三章 罪責感〈承前〉  正太しょうたは事務所に向かって歩き出したが、光田みつたの電話が気になり心は重かった。こんな気持ちで親父と話すのは億劫おっくうだ。  重い足取りで階段を上ると、踊り場に親父がいて、正...
  • 2017.11.06 更新
  • 連載第12回 第3章 罪責感〈承前〉
  • 第三章 罪責感〈承前〉 「あの、ちょっと」  真理子ま り こが正太しょうたを見る。 「あかんのか」  体は大きいのに押しが弱い、と学生時代からよく友人にからかわれた。気が小さいとは思っていないけれど、...
  • 2017.10.10 更新
  • 連載第11回 第3章 罪責感〈承前〉
  • 第三章 罪責感〈承前〉 「それに惣菜そうざいとかお弁当の消費しょうひ期限、とても短いわ」 「それは売る側にとって、もしものことがあったら大変だからね。食中毒でも出したら、営業停止処分をくらうし、それで評判を...
  • 2017.09.14 更新
  • 連載第10回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉 「ストーカーのおっさんが、岡本おかもとさんの紐ひもの結び方を知るはずないですよね」  三郎さぶろうは首をひねり、探偵にでもなったように顎あごに手をやった。そして大げさに膝ひざを打って、...
  • 2017.08.09 更新
  • 連載第9回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉 「有力な情報さえあればなんとかなるんですね」  慶けい太た郎ろうは麻ま那なに希望を持たせたかった。 「先生、事件性があると分かって、警察が動かないことはありません。私もそれを信じてい...
  • 2017.07.04 更新
  • 連載第8回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉  麻ま那なの泣き声は高く響ひびいて、待合室まで届いているだろう。幸い順番を待つクライアントはいなかった。  人の感情は、まるで波のように伝播でんぱする。赤ん坊が一人泣き出せば、それにつ...
  • 2017.06.05 更新
  • 連載第7回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉 「先生、先生は由ゆ那なさんのこと?」 「由那……小お倉ぐら由那さんですか」  珍しい名前だ、そんなに多くあるとは思えない。 「やっぱり知ってるんだ」  「ええ、まあ」  慶けい...
  • 2017.05.02 更新
  • 連載第6回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉 「ああ、マスコミね。家に帰ろうと店を出たら駐車場のところで、新聞記者に声をかけられました」 「黒縁 くろぶち眼鏡 めがねの痩やせっぽち、寝ね癖ぐせ男?」  正しょう太たは自分の髪の毛...
  • 2017.03.24 更新
  • 連載第5回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉  由ゆ那なの実家を見つけられないまま、慶けい太た郎ろうを乗せた列車はほどなく綾部あやべ駅に着いた。  ホームに降り立つと、十月の半なかばとは思えないほど風が冷たかった。綾部市も山に囲ま...
  • 2017.02.22 更新
  • 連載第4回 第1章 動揺〈承前〉
  • 第一章 動揺〈承前〉 「納得いかないって顔ですね」  光田みつたが慶太郎けいたろうの顔を覗き込む。 「『私の気持ちを分かってください』と結んでいるのがね」  慶太郎にそれが、問題を共有している特定の...
  • 2017.01.16 更新
  • 連載第3回 第1章 動揺〈承前〉
  • 第一章 動揺〈承前〉  熊井くまいの会社は奈良県生い駒こまにある。元々は京都市内の商社に勤めていたが、日本社会のフードロス現象に疑問を感じ、せめて食べ残しは飼料や肥料へとリサイクルを徹底させるべきだと訴え...
  • 2016.12.07 更新
  • 連載第2回 第1章 動揺<承前> 
  • 第一章 動揺 <承前> 「背中を押してくれた。そう思ったんですね」  偶然と思い込みの産物であることは明らかだ。しかしそれは言えない。 「感じるものでしょう?」  春来はる きが上目遣いで訊 きいてきた。...
  • 2016.11.07 更新
  • 第一章 動 揺
  • プロローグ・小倉由那の日記  私は、鉄チャンって呼ばれるような鉄道マニアではない。鉄道や電車そのものに興味があるわけじゃなく、そこに乗車している不特定多数の人たちに惹ひかれる。  子供の頃から、ずっとずっ...

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