見えない轍

見えない轍

作品紹介

人は誰しも「見えない轍(わだち)」に足を取られながら生きている……。
一人暮らしの女性・小倉由那がある日、自ら命を絶った。
ところが由那の姿を最後にみた女子高校生・棚辺春来は、「由那は自殺なんかしていない」と訴える。
その春来の心の叫びを聞いた心療内科医・本宮慶太郎は、独力で由那のことを調べ始めるが……。
小さなズレが違和感を生み、やがて大きな悲劇へとつながっていく──
乱歩賞作家が満を持して贈る、人間の業と再生を描いた「純文学ミステリー」の決定版。

見えない轍(わだち) 目次

  • 2017.07.04 更新
  • 連載第8回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉  麻ま那なの泣き声は高く響ひびいて、待合室まで届いているだろう。幸い順番を待つクライアントはいなかった。  人の感情は、まるで波のように伝播でんぱする。赤ん坊が一人泣き出せば、それにつ...
  • 2017.06.05 更新
  • 連載第7回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉 「先生、先生は由ゆ那なさんのこと?」 「由那……小お倉ぐら由那さんですか」  珍しい名前だ、そんなに多くあるとは思えない。 「やっぱり知ってるんだ」  「ええ、まあ」  慶けい...
  • 2017.05.02 更新
  • 連載第6回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉 「ああ、マスコミね。家に帰ろうと店を出たら駐車場のところで、新聞記者に声をかけられました」 「黒縁 くろぶち眼鏡 めがねの痩やせっぽち、寝ね癖ぐせ男?」  正しょう太たは自分の髪の毛...
  • 2017.03.24 更新
  • 連載第5回 第2章 否認〈承前〉
  • 第二章 否認〈承前〉  由ゆ那なの実家を見つけられないまま、慶けい太た郎ろうを乗せた列車はほどなく綾部あやべ駅に着いた。  ホームに降り立つと、十月の半なかばとは思えないほど風が冷たかった。綾部市も山に囲ま...
  • 2017.02.22 更新
  • 連載第4回 第1章 動揺〈承前〉
  • 第一章 動揺〈承前〉 「納得いかないって顔ですね」  光田みつたが慶太郎けいたろうの顔を覗き込む。 「『私の気持ちを分かってください』と結んでいるのがね」  慶太郎にそれが、問題を共有している特定の...
  • 2017.01.16 更新
  • 連載第3回 第1章 動揺〈承前〉
  • 第一章 動揺〈承前〉  熊井くまいの会社は奈良県生い駒こまにある。元々は京都市内の商社に勤めていたが、日本社会のフードロス現象に疑問を感じ、せめて食べ残しは飼料や肥料へとリサイクルを徹底させるべきだと訴え...
  • 2016.12.07 更新
  • 連載第2回 第1章 動揺<承前> 
  • 第一章 動揺 <承前> 「背中を押してくれた。そう思ったんですね」  偶然と思い込みの産物であることは明らかだ。しかしそれは言えない。 「感じるものでしょう?」  春来はる きが上目遣いで訊 きいてきた。...
  • 2016.11.07 更新
  • 第一章 動 揺
  • プロローグ・小倉由那の日記  私は、鉄チャンって呼ばれるような鉄道マニアではない。鉄道や電車そのものに興味があるわけじゃなく、そこに乗車している不特定多数の人たちに惹ひかれる。  子供の頃から、ずっとずっ...

top
Copyright © 2015 USHIO PUBLISHING CO.,LTD. All Rights Reserved.