桔梗の人

桔梗の人

作品紹介

2020年、NHK大河ドラマの主人公、明智光秀をモチーフに、末期の信長政権が抱えていた問題や、信長の人事政策に翻弄される人々を描き出す。また明智光秀の息子である明智光慶を取り上げ、息子の目からみた明智光秀の姿を活写するとともに、光秀の謀反の理由を、この息子の存在によって浮き彫りにする。いま風に言えば、猛烈社長のブラック企業に入ってしまい、自らのやりがいや目的を見失う話、かつ、その息子が父の謀反の理由を知った時、何を感じるのか、といった内容を含んだ、現代に通じるストーリー。

桔梗の人 目次

  • 2019.04.28 更新
  • 第五章
  • 第五章  秋風が吹き抜けてゆく。  幾重にも張り巡らされた堀、矢が刺さったままの土塁を横目に土橋の上を馬で進む左馬助は、ずれた侍烏帽子を正して城を見上げた。丸木で組まれた櫓は真っ黒に焼けており、土塁に張り付く...
  • 2019.04.03 更新
  • 第四章
  • 第四章  天正十年六月二日夕方。薄雲が空を覆っていた。  丹波亀山城二の丸御殿の書院の間で、十五郎は眠い目をこすりながら書状に目を通していた。  いくら主たる家臣たちが戦に出ているとはいっても、政の手を止め...
  • 2019.03.01 更新
  • 第三章
  • 第三章  縁側から庭に降り立った十五郎は、屋敷の屋根越しにそびえる煌びやかな五層の天守を見上げ、小さくため息をついた。時折吹く冷たい北風が十五郎の羽織を揺らし、安土山を越えてゆく。  天正十年の正月、十三歳と...
  • 2019.02.05 更新
  • 第二章
  • 第二章  光満ちる六畳間で、緊張に身を固くしながらも十五郎は茶筅をふるった。作法通りに茶を練り上げ、目の前に端座している師匠、津田宗及の前に置いた。しばし手に取った黒茶碗の風景を楽しんだ宗及は、縁に口を近づけ、...
  • 2019.01.07 更新
  • 第一章
  • 第一章  白い砂浜に腰をかけた明智十五郎は、弄ばれる前髪を風に任せたまま、寄せては返す波を眺めていた。  琵琶湖は日ごとに違う貌を見せる。鏡のように穏やかな日もあれば、荒れ狂う獣のように牙を剥く日もある。翡翠...

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